支援と虐待のグレーゾーン 在宅介護が守る尊厳

ヘルパーステーションもやい 管理責任者 伊東美輪

先日、各事業所の管理者が「東京都障害者虐待防止・権利擁護研修」を受講しました。
毎年受けている研修ですが、ニュースで見るような虐待は施設がほとんどで、私たち在宅介護では「あまりピンとこないな」というのが正直なところです。

そもそも虐待とは何でしょう。
むずかしく言うと「尊厳を害するもの」ですが、良かれと思ってしていたことが、気づかないうちに利用者さんを傷つけてしまうこともあります。
例えば、極端な例かもしれませんが、利用者さんが「最近親しくなった人にお金を貸してあげたい」と言ったらどう答えますか。
「返ってこないかもしれないからやめた方がいいですよ」というのが、私がまっさきに考えた答えです。
しかし実は、これが本人の「自分で決める権利」を制限してしまうこともあるというのです。

「支援」と「虐待」のグレーゾーンは常に存在します。
だからこそ、毎年研修を受けている私たちのたくさんの「目」と、研修の都度出てくる「通報」が重要になるのです。
「通報」というと、「告げ口」のようなネガティブなイメージがあります。
でも本当は、虐待を受けている人はもちろん、してしまった人や、その組織すべてを救う第一歩なんです。
介護従事者には、虐待を疑う段階で通報する義務があります。
第三者の目が入り、「何がいけなかったのか」を確認し、次のサービスに生かすことができます。
なぜそうなってしまったのか、ストレスだったのか、介護技術が足りなかったのか、認識不足だったのか、という背景を探り、立て直していくことができます。
「虐待」をしたい人なんて誰もいません。
だからこそ「通報」というきっかけで早く解決できれば、より良いサービスにつながっていくはずです。

さらに在宅でサービスを行っている私たちは、ご家族による虐待のサインに気づくこともあります。
そんなときも早い段階で事実がわかれば、ご本人はもちろん、「介護が辛くて誰にも言えず、つい手を出してしまった」というご家族の苦しみや、その原因に寄り添った支援を考えることができます。
結果として、通報はご本人もご家族も救うことができるのです。

通報まで至らなくても、「こんな場合はどうなんだろう」、「これって間違っていないかな」、など些細な疑問でいいので、みんなで話し合っていきましょう。
事例の少ない在宅介護にとって、そんな小さな疑問ひとつひとつが、虐待を生まない正しい支援を実現していくのだと思います。
福祉の仕事はそれぞれの利用者に合わせて正解の違うむずかしいお仕事です。
だからこそ、一人で抱え込まず、これからもみんなで声をかけ合いながら、利用者さんと向き合っていきましょう。

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