認知症の母との思い出

ヘルパーステーションゆいま~る葛飾 管理責任者 渡邉久美子


一人暮らしをしていた母は、85歳を過ぎて年齢相応に物忘れは多くなっても、公共交通機関を利用してひとりで出かけられるほどしっかりしていました。
そんな母に介護が必要になったら? 
介護職でありながら、そうなった時のことはあまり考えた事がありませんでした。

ある時、家の近くの交番から私の携帯に電話がありました。
電車で3駅、私の家に向かう途中の五差路で方向がわからなくなり、交番に相談したようです。
そのころから認知症と思われる言動が増え、受診したところレビー小体型認知症との診断でした。

定期研修を含め、認知症ケアについていろいろと勉強してきましたので、できるだけ母の意思を尊重し、否定はしないよう気をつけていました。
それでも、つい口調が強くなる事もあり反省することもしばしばでした。
「個人の生存と尊厳は、すべての人々にとって究極の価値である。」
当社の理念にも掲げられ、充分に理解して介護職を続けているはずなのに、親子だと感情が入ってしまう時がある自分にダメ出しです。
認知症のご利用者様を長期にわたって支えるご家族の気持ちと大変さを、あらためて感じました。

私の娘にも、通院の付き添いを頼んだり様子を見に行ってもらったりしたところ、私と違い娘(つまり孫)には穏やかに話をするのです。
通院の帰りの昼食は、娘たちは若い子の好む自分の食べたいお店に行き、支払いは母です。
でもそれが母には新鮮であり、祖母の立場も守れていたようです。
私に楽しそうにその時の事を話してくれました。
高齢だから和食の方がいいかも…なんていう固定観念にとらわれていただけでなく、母と向き合っている時、私の頭の中では常に「介護している」という気持ちでしたが、娘たちはもっと自由でした。
母のペースには合わせますが、娘たちもちゃんと楽しんでいました。
その空気感が良かったのでしょうか。
母と孫ふたりで旅行にも行き、綺麗な景色、美味しい食事を満喫してきました。
とてもいい表情の母の写真が送られてきました。

家族だけでなく近所の方、介護職の方、たくさんの方に支えられた母も、亡くなり一年が過ぎました。
母がそうだったように、介護を必要とする人に関わっている方はたくさんいます。
「ひとりで抱え込まない」というのは、家族など介護者のためだけでなく、介護される方にとっても良いことなのだと思います。

新型コロナ感染拡大の報道から2年たった今も終息の目途が立たず、第6波オミクロン株の感染者数も多く、人との関わりに不安が生じているそんな状況でも、介護を必要とする方にとってヘルパーさんは、きっと大切な存在です。
介護職の私達には、報道以外にも、真偽のほどの怪しい色々な情報が入ってくるだけに不安も大きくなりがちですが、基本的な感染予防にしっかり気を配り、みんなで今を乗り越えていきましょう。

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