新年に思うこと

もやい理事長 渋谷紀久雄


ここ数年の居宅サービス事業は、先行きが見通せないほど厳しい状況になっています。
未来の介護事業がどう変わるのか予測できませんが、取って代わる事業体があるとすれば、現状の介護事業を専門化し、人間にしかできない人と接する力を大切にして、事業を先へ進める事業体であろうと思います。
新年にあたり、日頃考えていた三点を記します。

1. 人手不足と売上減少
昨年末に厚労省から、2019年度「介護事業経営概況調査」の結果が公表されました。
全国の施設・事業所を対象とした、2018年度と2019年度の決算比較です。
収入と支出の差は全体的に前年度より悪化し、特に居宅サービスでの悪化が目立っています。

厚労省は、「前回改定が全体でプラスだったことで、収入は増えているサービスが多い。
人手不足で人件費が上がっていること」を悪化の要因としています。
介護給付費分科会の出席者は、「人材派遣会社、紹介会社への手数料」が高騰し、経営悪化の要因となっていると指摘しています。
人手不足だけが要因ではなく、今年も売上不振を覚悟しています。

2. 排泄介助と3K仕事
身体介護の中でも排泄介助は重要です。
セコムライフ2016春号から、女優の小山明子さんが夫の大島渚監督を17年間介護をして、排泄介助について感じたことを語った記事を引用させて頂きます。

「介護と下の世話は切り離せません。嫌だ、汚いと思ったら、介護はできません。私は大島が入院しているとき医学に関する本を読みました。・・・排泄することが生命にかかわる大事なことだと知ったことから、汚いとか嫌だとか思わず世話ができました。・・・でも世話をしていたら、『またなの、ああ嫌だ』となる。」と語っています。

きつい、汚い、危険な仕事を3Kといいますが、正しい理由もなく劣ったものとして不当に扱われます。
偏見と差別は全世界の大きな問題ですが、介護についてもそういう見方をする人もいます。
介護は、生命と尊厳にかかわる大切な仕事です。

3. 好き嫌いと向き不向き
面接のときや、職員からの相談のときに、好きでなければ仕事をやれないとか、仕事に向いていなければ仕事を続けられないと言われることがあります。
「イチローは、野球が好きだから、野球がうまいから、野球を続けられたのだ。」と言うのです。
しかし、野球を仕事とすることを決断したときからは、野球を好きであり続ける努力を続けていたのではないかと思うのです。
まず自分で決断する。
例えば「介護を仕事とする」と決断して、あとは仕事を続けるよう努力するのが「介護の専門職」だと思います。
仕事というのは、仕事が好きであることも大切ですが、仕事を好きになることが第一歩です。

今年は今までの時代が一区切りついて、新しい変化が始まる年になるかもしれません。
人生100年時代と言われますが、終活も大切ですがそれと同時に、今持っている力を生かして10年計画を立てたいと思います。

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