ドイツの介護制度に学ぶ

専務取締役 渋谷昌代

6月10日から17日まで、『ドイツの「ケアと住まい(共同居住住宅)」「終末期の医療・介護」視察団』に参加し、8か所の施設見学を行い、その担当者からお話を聞く機会を得ました。

介護保険制度の相違点

ドイツでは被保険者の保険料だけを財源としていて、現物給付に加えて現金給付があります。
また、医療保険に加入しているとそのまま介護保険に加入することになるため、年齢制限がなく、要介護の認定が下りれば子供でも給付の対象になります。
制度の成り立ち、国民のとらえ方に違いがあるため、単純な比較はできませんが、両方の制度の課題を知ることで、日本の介護保険制度の良い点を改めて感じることができました。

 ボランティアの存在

ボランティアなくしては在宅での介護や緩和ケアを提供することは難しいと言えます。
専門職からボランティアまで、チームとなってそれぞれの役割を担います。
多職種連携が強調される今だからこそ、ドイツの緩和ケアの現場から学ぶことは多いと感じました。
「それぞれが役割を分担しているだけで、同格のスタッフである」という意識を強く持ち、チームとして相手を尊重しながら、自分はどのようにチームに貢献できるのかと考え、その役目に責任を持つことができる、そのような強力な組織を目指していきたいと思いました。

 個人の尊重

子供には親の扶養義務はあるが、意思決定については、親子といえども別の人であり、判断をまかせる相手として委任がなければ、子供であるというだけで代理人にはなり得ません。
子供はお金は出すけれど、口は出せないという点は、非常に興味深かったです。

 高齢者ケアや緩和ケアは在宅が優先

在宅優先ということが、法律に明記されています。
ドイツ人も自宅で最後まで過ごしたいという希望を持っているけれど、実際に1人で死ぬのは難しいというのは課題であるというお話がありました。
シェアハウスは、そのための選択肢の一つとなっています。
いわゆる施設への入所はしたくないが、自宅で一人で過ごすことはできない場合に、その中間に位置するようなイメージです。
人生の終盤に自分がどのような環境で過ごしたいのか、どういう隣人たちとなら助け合うことができるのかということを考え、そういった場(一種の村のような共同体から新興住宅地の都市開発のようなものまで)を自ら創造していこうという主体的な動きが感じられました。

 緩和ケアは無料

2015年にホスピス・緩和ケア法がつくられ、誰もがいついかなる状況でも専門的緩和ケアを求める権利が認められています。
死という未知のものに、不安を抱えながら向かっていく中で、少なくとも経済的負担に対する心配は不要であるという点は素晴らしいと思いました。

 

ケルン大聖堂

最後に、視察を通して通訳を担当された方から「日本の制度はケアマネジャーが支えている制度とも言える」とおっしゃっていただきました。
ドイツでは、日本ほどサービスの種類はないものの、それでも個人が情報を集めて利用するには複雑であることから、要介護の認定を受ければ必ず担当のケアマネジャーがついてくれるというのは非常に良い制度であるというのです。
日本では当たり前のことでも、ドイツから見るとそのように評価される存在なのだということを非常に嬉しく思いました。

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