去年の言葉・今年の言葉

取締役 渋谷紀久雄

 

一年を漢字一字で表すという行事がありますが、私にとって昨年は故事成語で表すと、「人間万事塞翁が馬」でした。

北方に住むおじいさんが飼い馬に逃げられて不幸と思いますが、その馬が名馬を連れて戻って来たので幸福と思います。しかし息子がその馬から落ちて骨折してしまい、また不幸を感じますが、そのおかげで兵役を免れて長生きすることになります。吉凶禍福は繰り返し訪れて予測できないたとえですが、一喜一憂せずにあきらめないことがかんじんです。

2015年の介護業界は、特に経営体力の弱い事業者にとっては「激震」という凶の年でした。この動きはおそらく今年も続くとみられ、厳しい年になると予想されます。昨年は様々な生活分野の事業者が、介護・高齢者向け事業に参入しています。それぞれ理由があるわけですから、私たちは今まで気付かなかった考えを取り込んでいく必要があるでしょう。

参入事業の例として、まず損害保険会社が介護事業2社を買収しました。買収された事業所を見ると、介護保険制度は定着したが中身はまだまだと思える経営実態があり、自戒しなければいけないと思います。介護業界は資本基盤が弱い中小事業者が多く、資金力のある保険各社が、介護事業参入を進めています。安定した社会保障制度のためには経営基盤の強化が求められており、あわせて介護事業には今後の需要の伸びが期待されていることは間違いありません。

次に兵庫県を中心にカジノ型デイサービスが規制されている中で、機能訓練用としてパチンコ台を開発したというニュースがありました。指先だけでなく手足や耳や目を複合的に動作させて、楽しみながら身体機能を高めようとするものです。“いいものはいいのだ”という経営者のしぶとい信念が伝わってきますが、ぜひ学びたいと思います。

 

今年の故事成語は「四面楚歌」を選びます。

共に秦王朝を滅ぼした、西楚の項羽と漢の創始者である劉邦との最後の戦いから生まれた言葉です。
今年は絶体絶命の危機であるということではなく、なぜ劉邦が勝つことができたのか考えてみたいからです。
ある学者は、劉邦は多くの臣下に精一杯考えを尽くさせ、その考えることが臣下に十分力を発揮させることにつながったと言います。一方の項羽は、歴史上まれにみる人物ではあったが、臣下の考えを嫌がって最後まで自分で自分の力を尽くそうとしたといいます。
人に力を尽くさせ集智を結集する者は勝ち、自分の力だけを尽くし小智にとらわれる者は負ける、そういうものだということです。

今年は絶体絶命ではないが、たいへん厳しい危機ではあります。全員一つとなって、対策を考えましょう。
絶対あきらめないこと、はもちろんのことです。

 

 

 

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